勅を奉るに請に依れ

助からないと思っても助かっている

夢現 ―ユメウツツ― 感想メモ

そして幻想郷は滅亡した。

という大風呂敷を広げて始まった今作、端的にまとめるなら「濃厚な蓮メリ・ゆかれいむ本」。
もう少し具体的に言うと、幻想郷という世界に深く組み込まれたキャラクター同士が、それに翻弄されつつも互いの結びつきを再認識していくストーリー。「幻想郷滅亡」というズッシリ来るテーマに挑んだのも、ハッピーでもバッドでもないけど前向きなラストを提示したのも大変よろしい。ただ、今作で一番魅力的なのが、とんでもなくストレートな魔理沙の言動で、その勢いとアツさにぐいぐいと物語の中に引きこまれてしまった。

「向こうへ! その向こうへ! どこまでも! いけるところまで!──やりたいようにやるのさ!」

という、くどいくらいのまっすぐさで突き進む魔理沙の言動がとにかく気持ちいい。
そのストレートなセリフと弾幕で、強情な(とんでもなく強情だった)霊夢を救い、蓮子を救う。特に物語中盤、霊夢と邂逅した魔理沙がブレイジングスターを放つまでの流れの勢い、アツさは尋常じゃない。あくまで立ち位置は脇役なんだけど、だからこそ好き勝手に動けるキャラとして魔理沙というキャラを配置したのは、ベタながら面白いし、やっぱりこういう魔理沙は魅力的だ。

「幻想郷滅亡」という重く湿っぽいテーマを吹き飛ばす、魔理沙の底抜けの陽気さ・前向きさ。
繰り返しになるけど、これがこの作品一番の魅力だと思う。



いわゆるあらすじが一段落してから、本当に息つく暇もなく物語は進んでいくんだけど、その勢いを補強して加速させていたのが、ほた。先生の挿絵。挿絵といっても、ラノベにあるような半ページの形式的な挿絵ではなくて、そこらじゅうに挿絵がある。説明が何とも難しいから、メロン通販から画像を拝借してくると(作品は違うが)

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こんな感じ(中段のサンプル)。
弾幕戦になると、挿絵がもっと細切れになって物語を盛り上げてくれる。こういうキャラもの小説であれば、すごく効果的な表現だと思う。おそらく綿密な打ち合わせが必要で、商業ラノベではなかなかお目にかかれないだろう。こういう同人ならではの表現方法は面白いね。

画像の『うつつのゆめ』も奇跡的に上下巻揃ったから、じっくり読もう。そうしよう。


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夢現 - 人比良(四面楚歌)/ほた。(いよかん。)
http://allenemy.fc2web.com/c74/yume.html